『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』の感想・レビュー
『ソードアート・オンライン プログレッシブ(SAO-P)』はSAOのアインクラッド編を第1層から詳細に描いていくリブート作品です。
浮遊城アインクラッドは第100層まであり、原作では75層まで進んでゲームをクリアしていました。
あとがきで川原礫先生も言っていますが、年間1冊出版で2層ずつのペースで進んでいくとなると、単純計算で約38年かかることになります。
生きている間に完結してくれるといいのですが…。
原作とアニメ、そして劇場版との違い
私は原作は読んでおらずアニメと劇場版の情報しかありませんが、現段階での大きな違いをまとめると、
- アスナとの関係性
- 情報屋アルゴの存在
- 鍛冶屋ネズハの存在
- ミトの存在
あたりでしょうか。
アスナとの関係性についてはあとがきに書かれているように、原作ではキリトとアスナが上層階で親密な関係になるそうですが、SAO-Pでは第2層の段階でパーティを組み仲良くなっています。(本人達は一時的なものだと否定的ですが)
情報屋である鼠のアルゴはSAO-Pからメインキャラクターとして登場。
アニメでは第1期3話でチラッと出てきましたが、まぁそういうロールしている人もいるよねーくらいな印象でした。
しかし、SAO-Pにおいては何故もっと本編に出てこなかったんだというくらいガッツリ作品に関係するキャラクターであることが分かっています。
鍛冶屋のネズハとその仲間であるレジェンド・ブレイブスの面々はライトノベル版SAO-Pのみに登場し、劇場版では思いっきりカットされて存在しないことになっていて代わりにミトがストーリーに関わってきます。
ミトは劇場版「星なき夜のアリア」に登場するキャラクターで、アスナとは同級生であり、そしてある意味アスナがソードアート・オンラインに参加することになったきっかけの一人です。
ミトは原作にもライトノベル版SAO-Pにも出てこない劇場版オリジナルキャラクターであり、それによってストーリーがライトノベル版とは大きく変わってくるのではと予想されています。
既にアスナが使用しているウインドフルーレというレイピアの入手経緯が異なっているため、どういうふうに完結まで持っていくのかに注目です。
これらの情報から考えると、原作とSAO-Pはセットで読むことが可能であるものの、劇場版についてはパラレルワールドの別物として観るのがいいのではないかと個人的に思いました。
ただし、劇場版はSAO-Pを補足する描写があり完全に無関係とも言い切れないので、劇場版を観る場合はライトノベル版SAO-Pもセットで読む方が良いでしょう。
やっぱりキリト凄い。そして羨ましい
キリトの強さはアニメを見ていれば言わずもがなです。
しかしSAO-Pを読むことで単純に戦闘力が強いのではなく、実は洞察力と判断力が優れているのだと分かります。
ベータテストでの経験や知識が大いに生きているとはいえ、戦闘中の刹那の時間で正確な判断をし行動できるのはキリトだからできる所業。
だからこそちゃっかり全てのラストボーナスを掻っ攫っていったり、ネズハによる武器強化詐欺のトリックを見破ったりと他のベータテスターを上回る活躍が出来るのだと思います。
さらにはアスナの下着だけでなく恐らく裸まで見れるラッキースケベ的な運?の良さも兼ね備えているキリト、VR空間に作られたポリゴンデータとはいえ羨ましいぞ!
キリトと出会い救われるアスナ
SAO-Pではキリトはアスナがダンジョンで無茶苦茶な戦いをしているときに偶然出会います。
ちなみにアニメでは確か初めての攻略会議で出会っているので、描写上ではSAO-Pの方が先に出会っていることになります。
出会った当初のアスナは完全に自暴自棄に陥っており、もしキリトが現れなければあのダンジョンで死んでいた可能性が高いでしょう。
尚、デスゲームに翻弄され自暴自棄になっている理由は今巻では言及されず劇場版で明らかになります。
そしてアスナをさらに追い込んだ原因はゲームに関する経験や知識を持っていなかったことでしょう。
食事のシステムや宿泊施設のことなど、ゲーマーにはすぐ予想や理解できることでもゲームの類と無縁だとやはり難しいので、そのあたりの知識をキリトから得られたのも大きいと思います。
知識がないことは理不尽をより理不尽にしてしまい人生を不利にするというのは人類共通の教訓にしたいですね。
現実のアスナとSAOのアスナ
アスナは「最後まで自分のままでいたい。この世界に負けたくない」と言っているように、ある意味でクソゲーなSAOに対して抗うと宣言しています。例え死ぬことになっても。
ただ、それはアスナにとっては現実でも同じ状態だったのではないかと。
現実でのアスナは家柄もあり受験など結果を常に求められており、期待に答えられず失敗し負けてしまえば死も同然な環境なのではないか、と住む世界の違う私からはそう思えてしまいました。
影の立役者である情報屋・鼠のアルゴ
特別女性プレイヤーが少ないとされるSAOの世界において、恐らくキリトが初めて出会った女性プレイヤーと思われるアルゴ。
情報屋というプレイスタイルを取ることで間接的にゲームの攻略に関わっていきます。
特にベータテスターや前線組から情報提供してもらい無料配布している攻略本の影響はかなり大きいでしょう。
キリトを含めベータテスターはほとんどの情報を隠してた、というより出すに出せなかったので、アルゴが攻略本を作っていなければたくさんの死者を生みSAOの攻略は失敗していたと思います。
他の女性キャラのようにキリトに惹かれていくのか、それとも情報屋としての掟を守っていくのか、今後の関係性が特に気になるキャラクターです。
キバオウという憎めない男
アニメを観ていたときはキバオウのことをネタキャラ的に捉えていました。
放送当時のネット上の反応もそういう感じだったので、今になってキバオウがここまで関わってくるキャラクターだとは思いませんでしたね。
攻略会議と第1層フロアボス討伐時に突っかかってきただけでなく、キリトに怪しげな取引を持ちかけてきたりと、読み進めていくとどんどんウザキャラへと印象が変化してしまいました。
しかし、キバオウ自体はディアベルに利用されていただけであり、その言動はキバオウなりの正義という決して悪いやつではないということが分かってからは自分の中で憎めないキャラになりました。
第2層でも前線組として仲間を率いて戦っていますし、今後の活躍に期待したいですね。
ナーヴギアという最先端技術ゆえの不完全さ
茅場晶彦が開発したナーブギアというフルダイブ型VRマシン。
世界初のVRMMORPGであるソードアート・オンラインと共に最先端技術が詰め込まれてリリースされました。
私達から見ればとんでもなく未来の技術で、何でもかんでもリアルに体験できる夢のようなシステムに思えますがSAOの世界ではそうではなくまだまだ未熟な技術なようです。
それが分かるのが「液体環境はナーヴギアも苦手」という説明。
脳をハックしているのだから五感を完全にコントロールできているものだと思っていましたが、プリセットでそれっぽい感覚を再現しているだけとのこと。
ナーブギアあるいはSAOサーバーが正確に流体や皮膚感触に関する計算ができるほどの性能が無いのか、フィクションとはいえ完全な感覚の再現が不可能なのかは謎ですが。
他にも気になったのが食べ物。
SAOの世界にはちゃんと食事の概念がありますが、不思議なことにこれだけ自由で高度なゲームにも関わらず、パンにクリームを塗るときはコマンド操作なのです。
それだけならゲームっぽさを維持するために意図的にそうした可能性はありますが、やはり味の部分がプリセットによる再現ゆえに違和感があるらしい。
まぁどちらかというと違和感はプリセットだからというよりニセモノであるという先入観が原因っぽい気がしました。
その他に気になったこと
- ディアベルはどうやらイケメンという扱いらしい。アニメの世界は意図的に容姿を悪く書かない限りみんなイケメンに見えるから、普通の容姿とそうでない容姿が分かりにくく難しい。
- 改めて考えるとキリト達はまだ中学生なんだなぁと。どうにも大人びていて高校生くらいの感覚になる。しかも持ってる知識が凄い。頭良いのは知ってるけど普通神話なんて知らないぞ。
- オンラインゲームのPK要素って正直要らない派なんですよね。頭オカシイ人だけが喜ぶコンテンツだし。SAOでも正しくその通りだし。
- キリトは第2層時点ですでにブラッキーと呼ばれてたことが判明。せっかく覚悟決めてビーター名乗ったのにいまいち広まらず見た目だけが普及したってところかな。
- アスナが入浴してるときの挿絵が最高に良い。
- イルファング・ザ・コボルトロードとの熱い戦闘でアスナがフーデッドケープを脱ぎ捨てその姿を披露するシーン。アニメでもアスナの美しさが印象的で凄く記憶に残っている。
- エギルは本当に良いキャラしている。SAOの中でも特に好きなキャラの一人。
『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』の評価
個人的評価:
記事タイトルにも書いている通り、ソードアート・オンラインのファンであれば必読な1冊だと思いました。
SAO内の知識やシステムが事細かに書かれていますし、アニメでは分からなかった各キャラクターの背景も知れるので、ソードアート・オンラインの世界にどっぷり浸かれるのが凄く良い。
アニメさえ見ていれば原作ラノベは読んでいなくても楽しめるのもポイント。
ちなみに私が購入したときは映画公開記念の限定カバーがついててこっちもカッコよくて良い。
コメント